エードリヒ様の話によると、王家に縁ある品々を販売するのとは別で王妃殿下は食品の販売を行いたいという。というのも王妃殿下は王宮の片隅に菜園を持っていて、今年はどの野菜も豊作らしいのだ。
 採れたての野菜を使って皆が楽しめる食べ物を作りたい。その考えには賛成できるけれど、どうして私が指名されたのか不思議だった。

 こういうのはたいてい宮廷料理人へと話が下りていくはずだ。

 私の疑問を察したようにエードリヒ様はその理由について語ってくれた。
「最近シュゼットのお店でフォーチュン・カヌレを売り出しただろ? あの商品は王宮でも話題になっていて、その話を耳にした母上が取り寄せて召し上がったんだ。発想が面白いし、味も美味しいと絶賛していた。そして君なら野菜を使った斬新なお菓子を作ってもらえるんじゃないかと名前が挙がったんだ」
「え、ええっ!」
 私は目を見開いて驚きの声を上げた。