離縁するのじゃ、夫様!──離縁前提婚の激重陛下が逃がしてくれず、結局ズブズブ愛され王妃に君臨するまで─


ジェニットに連れられて食堂へと進む。食堂には活気があり、人が溢れていた。老若男女問わず食事が行われている。


「あ!ジェニット様!おかえりなさい!」

「お嬢様、今日もお疲れ様でした」

「ジェニット様ったらまた顔を汚して!」


食堂に一歩入るとジェニットは子どもにまとわりつかれ、中年女性から顔を拭かれ始める。


(使用人、いや領民たちか?)


次々に声をかけられ、労をねぎらわれるジェニットの姿をザラは観察する。にへへと可愛く笑うジェニットの元へ、大きな体躯を持つ頑丈そうな男がやってきた。


ザラが彼の初見の印象を端的に言えば、ムキムキ眼鏡だ。


「お嬢様、お帰りなさいませ。出迎えできず申し訳ございません」


ガタイの良さから粗野な印象を受けた男だが、物腰柔らかにジェニットを敬っている。さすがムキムキ眼鏡である。眼鏡と仕草からインテリジェンスを感じる。


「いいのよ、ヨハン。今日もよく働いてくれたわ。お客様をお連れしたの」

「お客様?」

「ザラじゃ。よろしく頼むぞ、ヨハン」