土で汚れたジェニットは、ピカピカに美しいザラを屋敷に連れ帰った。
屋敷の庭は畑同様に荒れていて、玄関扉はギシギシと音を立てた。
(手入れが行き届いているとは言い難いの。これが伯爵令嬢の屋敷とは)
ザラは噂に聞いていたはずのハミルトン領の財政難を実際に目の当たりにして、衝撃を受けていた。ザラの実家である平民リベルタ族の屋敷の方がよっぽど豊かだ。
(やはり知っているのと体験するは全く別のものじゃの)
女領主であるはずのジェニットは薄汚れた軽装で顔に土をつけている。
立派な身分のある彼女が農作業をしてあたり前な現状が、この領にはあるのだ。
扉を開けても、迎える使用人はおらず、ほんのり明かりの入った屋敷をジェニットが進んでいく。
「見ての通り貧乏で、大したもてなしはできませんが、好きなだけいてくださいね!」
にっこり愛想よく笑うジェニットに、ザラは微笑を返す。彼女が精一杯元気に生きている姿を痛々しいと思うのは勝手かもしれない。
(だが、この状況。我はいただけん)



