離縁するのじゃ、夫様!──離縁前提婚の激重陛下が逃がしてくれず、結局ズブズブ愛され王妃に君臨するまで─


女性はさらにゴーンと頭を鈍器で殴られた衝撃を受けたのが、そっくりそのまま顔に出ていた。ころころ変わる表情が可笑しくて、ザラがクツクツと喉で笑った。落ち着き払ったザラにはない愛らしさだ。


「素直で可愛い娘じゃ、名は何と?」

「ジェニットです!」


休憩を終えたザラが立ち上がろうと、両手を地面に這わせる。立ち上がる動作に無駄が多い様子を見て、ジェニットはザラのスカートの先から覗いた左右違う足先を発見した。


「お手伝いします!お手をどうぞ!」


ジェニットがスカートが汚れるのを意に介さず、さっとザラの隣に膝をついて手を差し出す。

ザラはエドワードが差し出す手をうっとおしく感じていた。だが、彼女の気遣いは嬉しくてすぐにその手を取った。


「助かるぞ、ジェニット」


豊かな黒髪を背に流したザラは、彼女の手を借りて立ち上がった。人を頼るのも存外悪くはないとザラの頬が自然とあがる。


「褒美を取らせよう」

「や!その、こんなのあたり前で!」

「ふふっ、我の名はザラじゃ。ジェニットよ、我は今宵、そなたの屋敷に泊ろう」

(泊まらせてじゃなくて、泊ろう?!すでに決定事項!)