流行り病の特効薬原料としてモミ葉は一躍有名になった。モミ葉原料のモミ茶は各地域から「健康に良いお茶!」として大好評で売れ続けていた。
強運の風に後押しされたハミルトン領の収益は絶好調だ。
「実は、先代のハミルトン領主は御高齢でな。隣の国で療養中なんだよ。ご子息も一緒さ」
「留守をジェニット様が守ってくれていたってわけ」
口元を隠す布を引き下げてモミ茶を口にしたエドワードは渋い顔をした。
毎夜ジェニットの屋敷で、騒がしい夕食を共にしている領民たちは情報の宝庫だった。
それぞれが知っていることを言わずにはいられない。
「先代様にご挨拶に行くってザラ様が意気込んでるのを、この耳で聞いたぜ俺は!」
「私も、ザラ様が張り切ってドレス職人を呼んだのを見たの」
「ジェニット様も大興奮しておられたわ」
「ザラ様が弟様と結婚してくれたら、ジェニット様と姉妹になる!」
「最高よね」
モミ茶会で盛り上がる農民たちは、ザラがこの地で婚姻を持つことに浮足立っている。ザラがハミルトン領に与えた功績は誰もが知るところだ。ザラはハミルトン領の英雄だ。
エドワードの顔から一切表情が消えた。



