四つん這いになったエドワードが呼び止めるのも聞かずに、ザラは去って行ってしまった。
ザラが帰ると言ったのだからきっともう部屋はもぬけの殻だ。彼女は風のように軽やかだから。
エドワードは身体が鉛のように重くて動かず、追えなかった。さすがにへこむ。
ザラの態度が軟化して、お前だけが特別と口説かれて、病床のエドワードを全力で支えてくれた。
完璧な自覚ある両想いになって、もう結婚秒読み!と思っていたのに、ここでまさかのザラから妨害を受けた。そして思いっきり置き去りだ。
「なにこれ、苦し……え、わからない、え?」
(名君と奉られて、地獄みたいな顔するの兄様くらいです……)
今だ四つん這いで立ち上がれないエドワードの横に膝をついて、ルドルフが兄の背をそっと撫でた。ルドルフは消沈するエドワードが石像のように動かないので焦った。
(こ、このままトンズラとかしないでくださいよザラ様ぁ?!信じてますよぉ??)
ルドルフはザラを信じるしかなかった。
王都の流行り病はすっかり収束に向かっていたが、エドワードだけは廃人と化した。
ザラが颯爽と去って行き、国王が廃人となった議会室では、誰もが顔を見合わせていた。
(((結局ザラ様って、何者だったの?)))
ザラが平民だったと後に知れ渡って、ひれ伏していた大臣たち、貴族諸侯は度肝を抜かれた。



