離縁するのじゃ、夫様!──離縁前提婚の激重陛下が逃がしてくれず、結局ズブズブ愛され王妃に君臨するまで─


ジェニットに差し出されたモミ葉香水の瓶を開けて、ルドルフは香りを嗅いだ。甘い香りが鼻に広がり、ジェニットを想う甘い気持ちと重なった。


「この香りをベースに調合いたしましょうか?」

「お願いします。あの、できれば明るい香りにしてください」

「明るい?」

「彼女は笑顔が、とても素敵だから」


ルドルフの恋に溺れる甘い表情とは反対に、ジェニットはどんどん沈んでいく。笑えなくなってしまいそうだが、なんとか飲み込んで微笑む。


何度か調合を試して、完成した香りは朗らかに明るい女性への甘い一本に仕上がった。


「こちらで完成です」


出来上がった香水をジェニットがルドルフに渡す。ルドルフは香りを確認して、本日一番優しい笑顔を魅せてくれる。


「ありがとう。満足な買い物だったよ」

「またのご利用お待ちしております」


ジェニットがやりきったと胸を撫でおろし、深く頭を下げた。涙が零れ落ちそうなのを無理やり飲み込む。


ジェニットはうっかり王弟殿下に抱いてしまった淡く儚い恋心を不憫に思った。


(なんて無謀な私……)