エドワードはルドルフがそのお願いを心に大事に大事に留めて使わないことを良く知っていた。だが、いつもそれを口にすることを忘れないのがエドワードの人心掌握術だ。
「いつもありがたいお言葉、心に留めております」
「そう言って絶対使わないから笑う。あ、ルドルフ水くれる?」
「はい、喜んで」
エドワードは可愛い弟にふっと笑って、足を組みかえる。ルドルフが兄の言いなりになりたい病を秒で発動し、水をコップに入れ始めた。エドワードは椅子にもたれて天井を見上げて願いを口にする。
「あー早くザラと結婚したーい」
ルドルフが兄のためにコップに注いでいた水が、うっかり溢れてしまった。
(兄様が王を退いてしまったら……)
ルドルフはエドワードの一番側で、誰もがエドワードが描いた筋書きの上を歩かされる様を見ていた。
その手腕は本当に素晴らしく、
エドワードが王たる王であることを刻みつけられる。
ルドルフはいついつまでも兄の言いなりになりたい想いをくすぐられていた。
(僕はもう二度と……兄様の言いなりにはなれないのか)
ルドルフの胸がズクンと痛んだ。



