離縁するのじゃ、夫様!──離縁前提婚の激重陛下が逃がしてくれず、結局ズブズブ愛され王妃に君臨するまで─



「なぜそんなことを?」

「今、王都で人集めてるんだ。医師と教師をばんばんスカウト中」


昨日、怪我人を治療するヨハンをルドルフが目撃していた。その手腕を見込んだルドルフが、王都へ引き抜こうとしたようだ。


「そのためにこんな辺境までそなたたちが出張って来ていたわけか」

「そういうこと。王都に来てくれたら最先端医療が学べる上に、研究資金も出す。その代わり、王都で医師として働いてもらうけどね」


王都で人を集めている理由はわからない。だが、おそらくエドワードが求婚の試練をクリアするための布石の一つだと見当がついた。


こっそりテラスから様子を眺めているザラの後ろに立ったエドワードが、ザラの頭頂に鼻を寄せてクンクン香りを嗅いだ。


「ザラの香り好き」

「静かにしてろ」

「はーい、勝手に嗅いでおくね」


頭頂でスンスンしているエドワードを放置して、ザラは玄関ホールでのヨハンとジェニットを見守った。王族から王都へとスカウトを受けたヨハンにどう対応するのか、女領主ジェニットの腕の見せ所だ。


ヨハンは大きな体でジェニットを見下ろして、しゅんと肩を竦める。


「俺は、故郷のハミルトン領を守るために医師になりました。お嬢様と先代への恩に報いるためです。王都のためじゃない」