「夢じゃなかったのね……」

 天蓋付きの寝台の上で、ニーナ・クーリッヒはシーツを握って耐えていた。
 冷たい口調と裏腹に驚くほど優しい指と舌がニーナの華奢な体を戸惑わせる。
「……っ、ぁ……ふッ……」
恐怖、羞恥、未知の感覚。与えられる刺激と胸にのしかかる重みが何を意味しているのか、理解できないほど子供ではないが、愛する人以外となんの躊躇いもなくできるほど割り切れてもいない。
――でも、私はここで生きていくしかない。
自分の意思で選んだのだから。そう言い聞かせて、ニーナは必死に体の力を抜いた。





――いつか、俺が空をみせてやる。

 空なんて、見上げればそこにあるものにおかしなことを言うと思った。でも、なぜかそれ以上に、この人と見る空はきっと宝石や香水瓶よりも美しい気がすると、小さな胸が高鳴った。
 柔らかな風に優しく揺れる木漏れ日。初夏の湖心のような美しい瞳――ねぇ、お願い。泣かないで。
 そう頬に手を伸ばしたところで、ニーナは目が覚めた。
 天井に伸ばしていた腕をおろして溜息をつく。

「……夢、よね」