幼馴染

 10月。
 野いちご学園高等部。

 野いちご学園高等部と彫られた正門。

 野いちご学園高等部普通化教室棟校舎。
 お城のような洋風のレトロな校舎。

 チセは3階廊下を歩いていた。前から眼鏡をかけた女子が歩いてきた。
 黒髪、下の方ツインテールだった。
 チセを見てきた。え、誰?女子はチセに近づいてきた。え?
 「黒田さん?」
 と、その女子は言った。チセはその女子の顔を見た。目は大きく、黒い瞳。顎は角ばっている。自分と同じで、地味で不気味だとチセは思った。誰だろう?
 「そ、そうだけど」
 と、チセはか細い声でいった。
 「初めまして。私、3年生の大川ユキっていうの」
 「せ、先輩」
 「うん」
 「は、初めまして」
 「あのう、あなた朝ちゃんと、よくいるよね」
 「あ、あさちゃん・・・・?」
 「あ」と、ユキ先輩。「東条君のこと」
 「あ、ああ」
 「ここじゃ、なんだから、ちょっとついてきて」
 「は、はい」
 ユキは歩いて行った。チセはあとをおう。
 チセは人気のないところに連れていかれた。ユキはチセに向いた。
 「あのね、私は朝ちゃんの幼馴染なんだ」
 へえ。
 「小さいころは、よく遊んでたんだけど、思春期になって、お互いよそよそしくなっちゃって、口もきかなくなっちゃって」
 そうなんだ。
 「もうすぐね、朝ちゃんの誕生日なんだ」
 え、東条先輩の誕生日!東条朝都は生徒会長任期を9月で終えていた。
 「でね、誕生プレゼントあげようと思ってるんだけど、思春期に入ってから話したことないから、朝ちゃんが、何が欲しいかわからなくて」
 そうか。
 「でね。黒田さんがよく朝ちゃんといるのを見かけたものだから」
 「ああ」
 「黒田さん、朝ちゃんが何が欲しいかわからないかな」
 「ううん」
 チセは考え込んだ。東条先輩は一体何が欲しいのだろう。高瀬君ならわかる。戦隊ヒーローのおもちゃとか、アニメのグッズとか、魔界ライダーのフィギアとか。でも東条先輩は・・・・・・。チセは6月に東条先輩と高瀬君と夏祭りへ行ったことを思い出した。そのとき、東条先輩はとてもはりきっていた。
 東条先輩はお祭りが好きなんだ。
 「どお」
 と、ユキ。
 「ううん、東条先輩はお祭りが好きみたいだからあ・・・・・・」
 「そ、そうか。そういえば小さいころも朝ちゃん、お祭り好きだったな」
 やはりそうか、とチセは思った。
 「ううん、はっぴとかどうかな」
 ユキは顔を輝かせた。
 「ああ、いいかも。実は私、手芸部部長なの」
 「へー」
 と、チセ。
 「はっぴ、つくっちゃおうかな」
 「え、自分で作れるんですか」
 「うん」
 と、ユキ。
 「ええ、すごおい」
 と、チセ。
 ユキは黙った。
 「朝ちゃんの寸法はかりたいんだよねえ」
 「そ、そうなんだ」
 「でも誕生日に朝ちゃんにサプライズで渡したいんだよねえ」
 「そう」
 ユキは考え込んだ。
 「手芸部の副部長って蓮見直月君なんだよね」
 蓮見直月先輩は風紀委員だった。
 「でえ、私の代わりにい、蓮見君に朝ちゃんの寸法図ってもらおうと思って」
 チセは黙ってきいている。
 「でね、黒田さんって、お昼休み、朝ちゃんと、高瀬君と一緒に昼食とってるでしょ」
 「うん」
 「そのときい、蓮見君に朝ちゃんの寸法図ってもらうっていうのはどうかなあ、なんて思うんだけど」
 「あ、とてもいいと思います」
 「そうよかったあ」
 ユキはだまった。チセは黙っていた。
 「じゃあ、蓮見君にも話してみるから」
 「は、はい」
 「じゃあ」
 と言って、ユキはさった。