チセは生徒会長に呼び出された。旧校舎の前。生徒会長はわっかに鍵が二つぶらさがったものを持っていた。旧校舎には生徒会長だけが入れる部屋があるのだ。
 「黒田さん」
 「はい」
 生徒会長はまわりを見回した。高瀬君を探しているのだ。
 「ようし、いない」
 「私独りに用って」
 「高瀬がいると、話がややこしくなるから」
 「ああ」
 それはわかる、とチセは思った。
 生徒会長はまたあたりを見回した。そうしてわっかのカギを見た。
 「えっと」
 カギを旧校舎玄関ドアに差し込んだ。がちゃ。ドアが開いた。生徒会長はドアを開けた。
 「ほら、入って」
 チセは中に入った。旧校舎玄関は薄暗かった。生徒会長が入ってドアを閉め、カギをしめた。
 「適当な靴箱あけていいから。スリッパはいってから」
 「あ、そう」
 生徒会長は靴箱を開け、スリッパを出し、靴を脱ぎ、靴箱に入れた。
 チセも適当な靴箱を開けた。スリッパが入っていた。それを出して、靴を脱ぎ、靴箱に入れた。
 「ちゃんと、靴箱覚えておきな。さがさなきゃ、なんねえ」
 「あ、ああ」
 チセは靴箱の番号を見た。位置も確認した。
 生徒会長は上り口に行き、スリッパを置いた。そうしてスリッパをはいた。
 チセも上り口に行き、スリッパを置き、スリッパを置いた。
 板張りだった。生徒会長は歩いて行った。チセはあとをつけて行った。床がみしみしいった。旧校舎内は薄暗く、木造りでこぎれいだった。
 「俺たちナイトクルセーダーズは不良グループベルセルクと抗争している」
 ナイトクルセーダーズとは生徒会長が総長をしている暴走族のチーム名だ。生徒会長はつづけた。
 「ベルセルクの総長はずっと謎だった」
 生徒会長は一息ついた。
 「その総長がとうとうわかったんだ」
 生徒会長はまた一息ついた。