愛されたいと願って



「お前は……」


私には君と言っていたのに、その人に対してはお前呼び。


どこか怯えているようにも見える。


この人は一体何者なんだろう……


「ちゃんと家に連れて帰りますから。それでは」


手を引っ張って、その人は連れ出してくれた。


もしかして、助けてくれたのかな……?


「あの、ありがとうございました」


連れ出してくれたその人に慌ててお礼を言うと……


「どういたしまして。お嬢さんは何でこんなところにいたの?」


お、お嬢さん……?


その呼び方に違和感を感じながら正直に答えてしまった。


「今日は私の誕生日だったんです。でも、家族は祝ってくれるどころか、私を置いて外食に行ってしまって。もうそれも慣れてるはずなんですけど、私の誕生日を覚えられていないほど関心がないんだって考えたら辛くなってしまったんです。そういう気持ちを振り払いたくて、外に飛び出したんですけど、気がついたら知らない場所まで来てしまっていて……」