香澄くんは吸血鬼。
血をあげてる私は香澄くんにとって特別な存在だった。
だけど、それもあと数年のこと。

タイムリミットが来てしまったら、きっともう香澄くんとは一緒にいられない。

だから、私はタイムリミットがきても一緒にいられる、香澄くんの特別になりたかった。

ーー香澄くんに告白しよう。

私はそう決心して、香澄くんを公園に呼び出していた。

私の手には、三本のバラの花束。
私が香澄くんに貰ったことがあるあの花束と同じ物。

たぶん、あの日だから。
元気になった香澄くんに、友愛から恋心を抱き始めたのは‥‥

私の思い出の花束。

‥‥‥‥でも、正直早まったかもと思ってる。
本当に特別になれたらいいけど、もしなれなかったら?
タイムリミットまでまだあるのに、失恋ってなったら今の特別さえ失ってしまう。

いや、でも、今このやる気になってるうちに告白しとかないと、絶対一生告白出来ないまま終わる気がする!

ぎゅっと花束を握りしめて気合を入れる。

「なに? 話って」

予想外に後ろから声をかけられて、心臓が飛び上がる。
昨日、寝ないで考えた告白のセリフも一緒に吹っ飛んでしまった。

ええい、ままよ!

「好きです、香澄くん! 友達としてじゃなくて、私を香澄くんの恋人にしてください!」

花束を香澄くんに差し出す。
怖くて顔は見れなかった。

頭を下げた私の耳に香澄くんの声が降って来る。

「え?」

鳩が豆鉄砲を食ったような声に、私は失恋を確信した。

「僕たち、もう付き合ってるでしょ?」

「へ?」

今度は私が豆鉄砲を食った。