「大好きな人ができたなら、自分の隣をどうでもいい女に陣取らせちゃダメなんだよ。私みたいに鈍感で図々しい子が来たら、怒鳴りつけてでも、彼女のための特等席は死守しなきゃ」
「……」
「柚葉ちゃんが悲しんじゃうからね」
「あっ、あの子は……」
「今までしつこく付きまとって……本当に……ごめんなさい……」
亜里沙が深く頭を下げた。
涙を我慢しているような途切れ声を、なんとか吐き出しながら。
今朝は柚葉さんの涙を見た。
でも今の方が、胸が痛くてしょうがない。
心臓が、靴で踏みつけられているような。
ナイフでグサグサ刺されているような。
遠慮なく引きちぎられるような。
そんな耐えがたい痛みに襲われ、亜里沙を笑顔にする言葉が見つけられない。
亜里沙は顔を上げた。
一生懸命、ニコニコ微笑んでくれている。
無理して笑ってるの、バレバレなんだけど。
痛々しいから、ほんとやめて欲しい。