直月くんは、キケンな恋に沼りたい



「……思ったより、しんどいものなんだね」


「何が?」


「恋をしないって、いつも直月は断言してたでしょ?」


「ああ」


「頑固な直月の心を溶かしたのが、自分じゃなかった。その敗北感に耐えられないってこと」


「僕は別に恋なんて……」


「ごまかさなくてもいいよ。付き合ってるんでしょ? 柚葉ちゃんと」



……あっ。



そのことか。



「まぁ……そうだな……」


仮の恋人だけど。



「人を好きになった瞬間から、傷つく覚悟が必要だったんだよね。それなのに、ハッピーになる未来ばっかり夢見て、失恋に耐える特訓なんて積んでこなかったなぁ。甘々な自分に腹が立っちゃうよ。マジウケる。マジでしんどい……」


「……」



「ねぇ、直月」



見るな。

今にも泣きだしそうな顔で。

僕の顔なんか。