亜里沙が校則違反をしなくなる。
そうなったら風紀委員として願ったりだが。
『僕は柚葉さんと付き合っている』
その噂が亜里沙の耳に入った時、亜里沙はどんな顔をするんだろうな。
極強メンタルの持ち主だ。
泣くことは絶対にないと思うが。
噂で知るくらいなら、僕が伝えた方がダメージは少ないのでは。
「直月、考え事?」
「えっ?」
「窓の外、ずっと見てるじゃん。なんか嫌なことでもあった? 話聞こうか?」
心配顔の亜里沙が、俺の顔を覗き込んだ。
ブワっと沸き上がる罪悪感。
「べっ、別に。見回りを再開するぞ」
亜里沙の顔を見るのが気まずくて、僕は顔をこわばらせたまま足を動かす。
僕が醸し出す闇ブルーの空気。
耐えきれなかったんだろうな。
吹き飛ばすように、亜里沙が陽気な声を上げた。



