「ムスッとしてるってことは……」
「何?」
「昨日のお昼休みは、私とずーっと一緒にいたかったのかなぁって、うぬぼれちゃうけどいい?」
「僕はいつもこの顔だ」
「そっかそっか、淋しかったのかぁ。言ってよ。甘えてよ。今日は腕を組んで、見回りしてあげちゃう」
「離れろ」
「たまにはゼロ距離を許してくれてもいいじゃん。なんか楽しい。アハハ~」
笑顔でグイグイ来る亜里沙を、全力で拒むこのやり取り。
悪くない。
心の奥に、楽しんでいる自分がいるのも確か。
なんなんだろうなぁ。
心臓が波に浮かんでいるような心地よさ。
無性に攻撃をしたくなるような荒っぽさ。
そんな快と爆が入り混じった、自分でもコントロールしづらいこの衝動は。
でも、安心はした。
今朝の亜里沙の態度が、ずっと気になっていたから。
柚葉さんにリボンを結んでもらっていた亜里沙の瞳。
悲しく揺れていたような気がして。