「亜里沙って呼んで! 苗字が嫌いなの」
「好きになる努力をしろ」
「私の心の傷、これ以上広げたら責任取ってもらうからね」
「なにそれ」
「そーだなぁ。例えば、私の彼氏になるとか!」
「亜里沙、リボン出して」
……うっ。
名前呼びへの移行、早すぎっ!
一瞬のためらいもなかったよ。
そんなに嫌?
私が直月の恋人になること。
まぁ、いいさいいさ。
名前で呼んでくれた。
呼び捨てだった。
凛とした声で『亜里沙』って。
親密度は一歩前進ってことで。
「制服のリボンかぁ。どこかなぁ?」
玄関で突っ込んだことは覚えてるよ。
スクールバックの底あたりに、あると思うけど。



