今思えば、自分の正体をあかしておけばよかったんだよね。
髪を染め、校則違反で直月の気をひこうとする前に。
『病院で桜色のマカロンをもらったのは、私です』って。
過去に飛ばしていた意識を、現在に戻す。
私の手首は、未だ直月に掴まれたまま。
引っ張られるようにして、私は廊下を踏みしめる。
あるドアの前。
立ち止まった直月は、私の手を離した。
手首に残る甘い温もり。
愛おしい。
消えないで欲しい。
そう強く願っても、直月の熱は冷めていってしまうから悲しい。
直月はポケットから鍵を取り出すと、慣れた手つきでドアのかぎを回した。
「亜里沙、入って」
「ここって……」
「風紀委員の部屋。委員長に許可は取ってあるから」



