直月くんは、キケンな恋に沼りたい



本人はただ、風紀委員として当たり前のことを言っただけ。


女子をトキメかせようなんて、これっぽっちも思っていない。

でも騎士様系イケメンに心配されたら、乙女心は疼きだすわけで。

心を惑わす重罪に問えないから、たちが悪い。



私の目の前に立つ、制服姿の直月。

結んだリボンが、納得いく形にならないらしい。

未だに私の瞳には、白くて綺麗な手が映っている。



「左右対称に結ぶの、案外難しいんだな」


「女子の苦労、わかってくれた?」


「ああ」



彼は絶対にわかってない。


毎朝の女子の苦労も。

私が抱く直月への恋心が、どれだけ真剣で、どれだけ深いかってことも。



「なんか曲がってる気がするんだよな。もう一回結びなおさせて」と、私の目の前を陣取っている直月。


カップル並みの至近距離に、私の心臓は無傷ではいられない。

キュンキュン、バコバコ、肌にぶつかりまくっている。



ドキドキしまくっているのは私だけって。

直月はいつもの平常心キープだし。


この温度差、マジで悲しい。

私が女に見えないって、宣言されている気がしてさ。