――早く出て行ってくれないかなぁ。
職員室内に充満する嫌味な空気。
察知をした私は、しぶしぶ足を動かした。
他人のことなら「それはおかしいでしょ!」と怒鳴れるくせに。
自分のこととなるとダメだなぁ。
怒りを押し込んでしまうところがある。
「授業が始まる前に、さっさと教室に行くぞ!」
捕まれている手首に痛みが走るのを、我慢して歩き出した、ちょうどその時
「先生」
凛とした声が、私の耳に届いた。
「権蔵寺さんの手を、離してください!」
慌てて顔を上げる。
職員室のドアをふさぐように立っていたのは、不機嫌顔の直月。
キリっと吊り上げた目を、先生に突き刺している。
「いくら先生が生徒指導という重役を背負っているとはいえ、謝罪をさせるのはやりすぎだと思います」
そう言いながら私を掴む先生の手を、直月が引き離してくれた。



