そんなこと言っても、しょせん私の理想論も、耳障りのいい綺麗ごとで。
社会の厳しい荒波にもまれていくうちに、自分を守ることでいっぱいいっぱい。
他人なんてどうでもいいっていう、無慈悲な大人になってしまうのかもしれないな。
やだやだ、そんな人間にはなりたくない。絶対に。
「権蔵寺、今から先生と教室に行くぞ」
嫌な予感しかしないけど、あえて口角と両手を上げてっと。
「私を教室まで送ってくれるの? わーい。サンキュー、先生」
「はぁぁぁぁ~ 能天気にもほどがあるなぁ……」
「先生、もっと褒めて褒めて」
「もうすぐ午後の授業の予鈴が鳴る。クラスメイト全員が揃ったら、黒板の前でみんなに謝るんだ」
「謝る? 私、みんなに何か悪いことしちゃった?」
「今までオマエが風紀を乱してきたせいで、みんなが迷惑している。2-Aの生徒たちが受けたテストの出来が悪かったのも、権蔵寺、オマエのせいなんだぞ」
「……何……それ」
さすがにそれは、笑えないよ。
罪のなすりつけじゃん。



