「あ、マーキングしてもらったんだ?」

 翌日、学校に行くと士門くんからマーキングのことを即座に指摘された。
 ボンっと顔が赤くなる。
 昨日、夜紅さんを殺しかけたことは一旦頭の端に置いておき、私は教室から士門くんを連れ出し、中庭までダッシュした。

「声が大きいよ!」
「別に、恥ずかしがることでもないだろう?」
「そうなの!?」

 吸血鬼はマーキングってやつをするたびにキスをするのか?貞操観念まで人間離れしている?

「ああ、なるほど。そういうことね……」
 
 士門くんは勝手に私の頭の中を読んで、何やら納得している。吸血鬼にプライバシーの概念はないのか。

「東雲さん、マーキングってなんなのか知ってる?」
「ううん。知らない」
「吸血鬼が互いの管理下にある人間を取り合わないようにつけておく目印みたいなものだよ」
「目印……」
「冷蔵庫の食べ物に名前を書いておくようなものかな?」

 吸血鬼のくせに俗っぽいことを、よく知っているじゃない。