「友との盟約により、俺がお前の衣食住の面倒を見る」

 彼は膝を畳につき私の前で跪くと、自分を両親の友人だと名乗った。

(お父さんとお母さんの友達……?)

 両親にこんなに美形の友人がいるとは聞いたことがなかった。

 私は彼の顔をまじまじと観察した。

 灰色の色つき眼鏡越しでもわかる整った顔立ち。細身で引き締まった身体。漆黒の喪服では隠せない色香。
 死出の旅立ちを見送る装束がこれほど似合わない人はいないだろう。

 ……なんて綺麗なんだろう。

 彼が両親が亡くなり悲嘆にくれる私を迎えにきてくれた死神だったのなら、こんなに嬉しいことはないのに。
 私は苦笑した。

 いつまでもそうやって返事をせずにいると、彼はゆっくりと色つき眼鏡を耳から外した。
 ドクンと心臓がとび跳ねる。

 ――彼の瞳孔は血を垂らしたように真っ赤だった。

 すべてを見透かすような異形の瞳に射抜かれ、呼吸が止まりそうになる。