目を逸らしたままの羽那を見つめていると、
手にギュッと握り拳が出来たのが分かった。



〝何か〟言うんだろう。



羽那は、〝何か〟をものすごい伝えたいとき、
昔から、──────ギュッと握り拳を作る。



『..................私は、お姉ちゃんだよ、』



耳を澄ませていると、
羽那から聞こえたのはそんな言葉。



きっと、体育祭のときのこと、
気にしてるんだろうなって思えた。



違う、違うんだ、羽那。



俺は羽那に分かって欲しい一心だった。



『ぁ、あーー、あのな、羽那。
言葉のあやっつーか、ちゃんと思ってるから
〝姉〟って。だから、俺のこと許して?』



そう伝えてみたけど、
俺の顔も、声も焦ったようになっていたから、
たぶん、羽那にもバレてるだろう。