【完結】鍵をかけた君との恋

 どちらの名も呼べぬまま立ち尽くす最中、勇太君の見事な戦法に、陸が体勢を崩した。

「あっ」

 苦しい姿勢、だけど落ちまいと、必死に耐えている。私は息を吸った。

「り、陸!頑張って!」

 その瞬間、陸は立て直したようにも見えたがそのまま落馬。勝負は勇太君の勝ち。広い校庭の空は、歓喜と落胆の声で埋め尽くされた。

 砂に塗れた陸の背中は哀愁いっぱいで、まるで何か大きな闘いに負けたようにも思えた。


「ほら女子!始めるわよー!」

 女子演技指導担当の先生が遠くで叫ぶ。女子達は火花のように、いっせいにその場から散っていく。

「ほら乃亜、行くよ!」
「う、うんっ」

 私も後ろ髪ひかれる思いでその場を離れた。

「応援するの、菊池勇太じゃないんかい!」

 途中、凛花が走りながら私にツッコミを入れた。私も自分で自分の頭をハリセンで叩きたいくらいだ。

 結局、陸なんかいっ。