【完結】鍵をかけた君との恋

「はーいっ、ここで少し休憩ーっ。各自水飲んで、また十分後に再開ねー」

 先生の合図で、凛花と私はドサッと地面に尻を落とす。

「意外とハードなダンスッ」

 そう言って、彼女は体操着の中に風を送る。

「男子達は騎馬戦かあ」

 ふたつに区切った校庭の片面では、男子による騎馬戦の練習が行われていた。本番さながらに盛り上がる彼等をぼんやり眺めていると、手で丸く双眼鏡を作った凛花は言った。

「お、菊池勇太の番じゃん!わっ、しかも相手、陸だよ!騎手対決っ」

 目を細めて見てみれば、そこには確かにふたりの姿。

「なんか面白そう!近くで見ようよ!」

 瞬く間に疲れが吹き飛んだのか、彼女は私を置き去りにして走り出す。

「ちょっと、待ってよっ」

 私も慌てて腰を上げ、その後を追った。
 

「位置について!」

 バンッ!というピストルの音と共に、ゲームは始まった。
 先に仕掛ける陸。上手く躱す勇太君。次は勇太君が後ろに回り込む。陸が手で払う。攻める、逃れる、また攻める。
 どちらも譲らない中、いつの間にやら観衆もたくさん集まって、ふたりの名前を叫んでいた。凛花が言う。

「乃亜は菊池勇太でしょ?じゃあ私は、陸を応援するね。いっけー陸ー!」

 遠慮なしに陸の名を口にする彼女の横、喉に空気が引っかかる。私は、どちらを応援したいのだろう。