【完結】鍵をかけた君との恋

 会計を終わらせ店を出ると、先に表へ出ていた陸が、犬のように戦利品を咥えていた。

「チョコ泥棒……」

 キッと睨んでから家路を行く。陸は後をついて来る。

「乃亜。うまいぞ、これ」
「あっそ。性格悪っ」
「はははっ。くっやしそ〜」

 そんなやり取りをしているうちに、陸は自宅を通り過ぎた。

「どっか行くの?」
「夜だし送ってあげようと思って」

 意地悪なんだか優しいんだか、彼は時折掴めない。

「晩飯買ってるってことは、親父さんまた遅いの?」

 敗者の隣で堂々とふたつ目のチョコを頬張って、陸は聞く。やはり意地悪だ。

「そうっ。今日も明日も明後日も、一週間はコンビニご飯っ」
「そっか……」

 陸の声は、僅かに暗くなったかもしれない。心配をかけたかなと思ったその時、ピコンと携帯電話が鳴った。

「メール?」
「うん、勇太君だ。塾終わって今から帰るって」

 そのメールに私が返信している最中の陸は、ずっと無言だった。


「私も、勉強しよっと」

 マナーモードに切り替えた携帯電話をポケットに戻して、私は言った。

「どうした、急に」
「みんなが頑張ってる中、焦ってるのは事実だし。そろそろ本気で勉強やらないと」
「高校、行く気になったのな」
「行かないと漫画も貸してくれない、意地悪な幼馴染がいるからね」
「漫画の為かよ」

「そう!」と私がきっぱり断言すると、陸も「作戦成功!」と胸を張った。