【完結】鍵をかけた君との恋

 教室の出入り口。扉に手をかけた陸。

「「り、陸っ!」」

 意図せずとも揃うのは凛花との声。

 どこから聞いていた、いつからそこにいた。話題を変える前のあの話は、耳にしていないだろうか。彼女もきっと、私と同じことを懸念し、慌てたのだろう。

 廊下に半分置いていた身を、全て教室に入れる陸。

「何してんの、帰りもしないで」
「り、陸こそ。帰んなよっ」
「担任に居残りさせられてた。何話してんの」
「え、えーっと……」

 今にもパニックで卒倒しそうな私に代わり、凛花はバスケの速攻にも似たスピードで、陸の元へと駆けて行く。

「私の進路相談してただけ!バスケ強い学校、幾つかピックアップしたりして!」
「ふぅん。そうなんだ」
「行きたい高校は乃亜にしか言ってないから、陸には内緒内緒!ほら、帰った帰った!」
「え。おいっ」

 陸をぐぐっと押して強引に教室から追い出すと、すぐさまピシャンと扉を閉める。親指を立て微笑み合ったのも束の間、重苦しい空気が漂った。

「陸に聞こえてないよね?乃亜と菊池勇太の昨日の話」

 聞こえていないと願いたい。