【完結】鍵をかけた君との恋

 翌日の放課後。クラスの皆が下校した教室。
 凛花とふたりきりの空間で、昨日の出来事を話すと、般若(はんにゃ)のような顔を返された。

「早過ぎっ。まだ付き合って二週間も経ってないよ」
「私も、そう思う……」
「しかもあの菊池勇太がねー。意外と女の子の扱い、慣れてるんだね」

 勇太君は、初めてではなかったのだろうか。

「乃亜痛くなかった?初でしょ?」
「うーん。最初だけちょっと」
「そうなんだ。じゃあさ、その後は気持ちいいの?」
「そ、そんなの言いたくないよっ」

 本当のところ、痛みが消えた途中からはよくわからなかった。恥ずかしい気持ちは終始続いていたし、緊張の糸は絶えずピンと張っていた。ただ印象に残っているのは、勇太君が私に向ける、愛おしそうな瞳。

 ぽやぽやと昨日を回想していると、凛花に首を突つかれる。

「乃亜、あんたキスマークついてるよ」

 その発言は、爆弾を投げつけられるほどの衝撃で、私をドカンと地中に沈めた。
 鞄から取り出したミラーで慌てて確認すれば、そこにはくっきりはっきり赤い痕。

「う、嘘でしょ……何これっ。全然気が付かなかった……」

 小指の指紋ほどにも満たない大きさだけれど、それでもこの位置の朱色は不自然だ。

「乃亜をジッと見なきゃわかんないよ。でも、ボタンは上まで留めた方がいいかもね」

 凛花の言葉は気休めにもならず、私はただただ絶望した。