「乃亜。飲み物何にする?」
「オレンジにしよっかな。勇太君は?」
「じゃあ俺もそれ」

 地元の駅から二駅先にあるリゾートカフェ。日曜日の勇太君と私はそこにいた。

「こんな可愛いカフェがあったの知らなかった。勇太君、よく知ってたね」

 彼の私服は、夏休み以来。

「前に母親と来たことがあるんだ。デートっぽいでしょ」

 そう言って彼は、コップの中の氷を指で回した。

「この前の乃亜、だいぶ疲れてるみたいだったけど平気?」
「この前?」
「うん、学校でずっと寝てた日」

 ああ。陸の家に泊まった次の日のことだ。

「前日の女子会がちょっと長引いて……」
「そうなんだ。凛花ちゃん?」
「いや、えーっと……後輩っ」
「へえ。後輩にも仲良い子がいるんだね」

 やましいことなど何もないが、『陸の妹』というワードは伏せた。

 彼はまた、氷を回す。