「なんなのよお。寝かせてよお」

 私はまた、瞳を閉じる。陸は私の目の前までやって来る。

「おい何してんだよ、学校終わったぞ」
「今日一日中こんな感じだよ〜」

 凛花はまた、うちわで私を突つく。

「どうしようもねえなあ。おい乃亜、歴史日本漫ガタリ、今日うちにとりくるか?」

 そのタイトルは、私を覚醒させる魔法の呪文だ。ガタンと勢いよく椅子から立てた。

「行く!」


 陸の家の玄関前。その漫画を受け取れば、気分は高揚。

「ありがとう陸!読むの楽しみ!」

 ほんのり両耳を赤く染めた陸は言う。

「うちで読んでいけば?乃亜が家に帰りづらい日は、少しでも帰宅遅くしていけばいいじゃん。帰りは俺が送るし」

 何も聞かないくせして、私のことをちゃんと気にかけてくれている。心がぽっと温められる。

「じゃあそうしようかなっ。でも、読書の邪魔しない?」
「しねーよ、お前は素直じゃねえなあっ」

「もー」と嘆きながらも揃えたスリッパを差し出してくるから、本で顔を隠して笑った。