【完結】鍵をかけた君との恋

「どうもすみません。遅くまでお世話になりました。さ、乃亜ちゃん行こっか」

 警察官に頭を下げた陸の母は、私の手を引いた。

 商店街の路地にある交番から一歩出れば、静閑が耳を突く。夜十時に近いこの時刻では、ほとんどの店のシャッターが降りていた。

「乃亜ちゃん、夕ご飯食べた?」

 交番で保護された理由を問うよりも先に、私の空腹を心配した彼女に少し驚く。

「もし食べてないなら家に来ない?茹ですぎたお蕎麦が余ってるの。陸も楓も、もうお腹いっぱいって言って、あと少しなのに食べてくれないのよ」

 いつもの優しい笑顔。

「そういえば、カステラもあったなぁっ」

 私の沈んだ気持ちを察してくれて、ご飯を食べていないと気付いてくれて、父を頼らなかった私に何かのトラブルを感じてくれた。
 そしてそれ等全てを私の口から言わせまいと、気丈に振る舞ってくれる彼女に涙が出た。