【完結】鍵をかけた君との恋

 コンビニのイートインコーナーには、何時間滞在していいのだろう。ここへ着いたのが夕方五時前だったから、もう三時間もここにいる。

 携帯電話の電池が残り僅かになり、充電器を持ってこなかった自分を悔いた。そして、窓際の席に座ってしまった自分にも後悔しているところだ。

 目の前の大きな窓ガラスは、陽が落ちると同時に鏡へ化けた。モノクロの自分とちらちら目が合って、反吐が出そうになる。

『乃亜ちゃんは、お母さんそっくりね』

 親戚や保育園の先生に、そうやってよく言われていた。

『大きくなったら、お母さんみたいになるのが想像つくわ』

 って。

 母は美人だったし頭も良かったから、私は彼女のようになりたいとずっと思っていた。

「それなのに、何この醜い自分……」

 ガラスの中。自分の顔。

「超ブッサイク」

 マジックで塗りつぶしてしまおうか。

 母に似て生まれたところで、お前は母にはなれないんだよ。勉強を頑張る、塾に行きたい。何を言っているんだ、どうせすぐ投げ出すくせに。高校なんか行かなくたっていいじゃないか。勉強なんか、大嫌いなんでしょう?

 そう訴えかけてくるモノクロの自分から逃げたくて、私はテーブルにうつ伏せた。