「な、何をするんだ!」
バサンッと投げたのは父の方面。ビールが彼の服にかかる。
「何その言い方!私だって私なりに、受験のこと考えてるんだけど!」
父は卓を一撃、音を立てる。
「塾なんか行ったって、乃亜はすぐ辞めるだろう!」
「はあ!?」
「じゃあ今まで一体何が続いたんだ、言ってみろ!ピアノだって水泳だって、一年も続いてないじゃないか!母さんも困ってたぞ!」
「そ、それはっ」
「父さん、間違っていないだろう!?」
大きな咳払いをした父は、台所に行くと煙草に火をつけた。換気扇に向かってぐちぐちと吐く、私への不満。
父の意見は全くもってその通りだ。親の金であれをして、これをして、全部投げ出してきた。けれど私は子供だから、今この状況で感謝など口にできない。血走った目で私を怒鳴りつける父に、反抗したくなるんだ。
「自分だって、何も続かないくせに……」
私のその言葉で、父は口から煙草を外す。
「禁煙も女遊びも、ずっとやめてないじゃん!お母さん苦しんでたのに!お父さんの浮気が判明してからずっと泣いてたのに!なのにお父さん、お母さんが癌になってもずっと浮気してたじゃん!お母さんが死ぬまで!」
何も返さず戸惑うだけの父に、私はまた新聞紙を投げつけた。
「お父さんなんか大っ嫌い!」
今度の父は手を翳すだけで、どこを殴ることもしなかった。その代わりに、目も合わせようとしない。
「……何も言わないの?」
情けないよ、お父さん。
「それともねえ、何も言えないの!?」
煙草がぷるぷると震えているのは、娘の豹変に怯えているのではなくて、後悔からくるものだって思いたい。
父をひとり家に残し、私は財布と携帯電話を持って家を飛び出した。
バサンッと投げたのは父の方面。ビールが彼の服にかかる。
「何その言い方!私だって私なりに、受験のこと考えてるんだけど!」
父は卓を一撃、音を立てる。
「塾なんか行ったって、乃亜はすぐ辞めるだろう!」
「はあ!?」
「じゃあ今まで一体何が続いたんだ、言ってみろ!ピアノだって水泳だって、一年も続いてないじゃないか!母さんも困ってたぞ!」
「そ、それはっ」
「父さん、間違っていないだろう!?」
大きな咳払いをした父は、台所に行くと煙草に火をつけた。換気扇に向かってぐちぐちと吐く、私への不満。
父の意見は全くもってその通りだ。親の金であれをして、これをして、全部投げ出してきた。けれど私は子供だから、今この状況で感謝など口にできない。血走った目で私を怒鳴りつける父に、反抗したくなるんだ。
「自分だって、何も続かないくせに……」
私のその言葉で、父は口から煙草を外す。
「禁煙も女遊びも、ずっとやめてないじゃん!お母さん苦しんでたのに!お父さんの浮気が判明してからずっと泣いてたのに!なのにお父さん、お母さんが癌になってもずっと浮気してたじゃん!お母さんが死ぬまで!」
何も返さず戸惑うだけの父に、私はまた新聞紙を投げつけた。
「お父さんなんか大っ嫌い!」
今度の父は手を翳すだけで、どこを殴ることもしなかった。その代わりに、目も合わせようとしない。
「……何も言わないの?」
情けないよ、お父さん。
「それともねえ、何も言えないの!?」
煙草がぷるぷると震えているのは、娘の豹変に怯えているのではなくて、後悔からくるものだって思いたい。
父をひとり家に残し、私は財布と携帯電話を持って家を飛び出した。



