「凛花って、塾行ってるの?」

 昼休み、校庭の隅。鉄棒に跨った私は聞く。凛花はブッと数滴の唾を空に吐いていた。

「乃亜の口から塾とか笑える!なんだかんだで学級委員に影響されてるじゃん!」
「影響、されてるのかなあ」

 足を軸にぐるっと半転すれば、逆さになった校舎と思考。

「勇太君が言ってたんだけどね、勉強は思い通りになるらしいよ」
「何そのクレバー発言」
「凛花は塾、行ってる?」
「行ってるよ。バスケ部引退した途端、お母さんが行けって」
「ふうん。みんな、勉強してるんだねえ」

 ぶらんぶらんと体を揺らせて、景色も揺らす。凛花も「よっ」と逆さになった。

「乃亜、志望校決めた?」
「決めるも何も、私のレベル的にこの辺じゃ無理。一番近くて桜橋(さくらばし)高校かな。凛花は?」
「私は妙海(みょうかい)高校かな。あそこバスケ強いし」
「高校行ってもやるんだ」
「うんっ。もちろん!」

 未来に希望を持ち進学を決めた彼女の横顔は、キラキラとしていた。

「私も塾くらいは、行こうかなあ」