「何急に。もうシャワー浴びちゃったんだけど」

 つい先ほどコンビニで購入した常温の水ですら、手元ですぐに汗をかく。今宵もまた、熱帯夜。川辺の風も生温い。

「何じゃねーよ。呼び出した理由くらいわかってんだろっ」

 陸は不機嫌だった。両手をパンツポケットにねじ込んで、片足で地面を蹴って。

「勇太君のこと?」

 心当たりがなかったわけではない。だからそう聞いた。
 陸は「そーだよ」と舌を打つ。

「勇太君と付き合ったことを報告しなかったから怒ってるの?そんなの今までだってそうだったじゃん。陸にいちいち知らせる義理なんかないでしょ」

 プシュッとペットボトルの蓋を開けて、こんなことしか言えぬ口を塞ごうと思った。しかしそれは、陸が私の腕を掴んで制御した。

「乃亜は勇太のこと、本当に好きなのか?」

 全てを見透かすようなその瞳に、吸い込まれそうになる。

「ちょっと陸、痛いっ」
「答えろよ!」

 疎らだが、川辺には人が歩いていた。陸の荒げた声に、その人達が指をさす。

「陸、ここ外だから。そんな大きな声出さないで……」

 陸の殺気だった雰囲気に怖気付く。陸に嫌われてしまうのではないかと怯えてしまう。