乃亜(のあ)って好きな奴いる?いないなら俺と付き合ってよ」

 中学三年生の夏休み、連日熱帯夜。周りは皆、受験勉強で忙しなく過ごしているというのに、私と(りく)は夜空の(もと)、コンビニの傍でアイスを頬張っていた。

「陸、垂れてるよ」
「わ。やっべー」

 コーンを伝うアイスを舌で掬う陸。変てこな顔に、少し笑う。

「どうせまた、罰ゲームでしょ?」

 クラスの男子が考案したゲームの延長線で、過去に何度も愛を告げてきた陸の「付き合って」は、もう信じないと決めている。

 ぽりぽりと頬を掻いて、陸は言う。

「今回はそのお……罰ゲームじゃないんだ」

 陸の耳はほんのりと赤かったかもしれない。でもそれは、勘違いかもしれない。

「なあ、乃亜」

 真剣な眼差しを寄越されて、思わず息を飲む。

「お前のことが好きなんだ。本当に」

 陸の向こう、夜空の中。大きな夏の大三角。