【完結】鍵をかけた君との恋

「凛花」

 下唇を噛むだけの、彼女に言う。

「率直に、凛花の今の気持ちを言ってほしい。何を言われてもいい、言葉なんて選ばなくていい。覚悟決めて、今日ここに来たから」

 潤んだ瞳と視線が絡む。深く息を吸った彼女は、それを大きく吐き出した。

「じゃあ……うん、遠慮なく」

 そしてまた、息を吸う。

「まじあり得ないっ!最っ低!」

 バキュンといきなり打たれた弾丸に倒れそうになったけど、グッと足に力を入れて持ち堪える。

「なんなの!?なんで今更そんなこと言うの!?意味わかんないよっ!もっと早く言ってくれればさ、私、陸だけは絶対に好きにならなかった!恋愛で友達と揉めるなんてまじ勘弁だし、乃亜の好きな人なら尚更、応援させてほしかった!」

 はあはあと肩で息をして、震える彼女は拳を握った。

「せっかく……せっかく好きな人ができて付き合えたのに、好きになれるように頑張るって言ってもらえたのにっ!私が乃亜に敵うわけないじゃん!昔からずっと陸の側にいて、陸だっていつも一番に乃亜を気にかけてて、ふたりには絶対的な絆があるんだよ、ふざけんな!」

 彼女が懸命に堪えるものを、先に私が流してはいけないとわかっていても、早々と限界を迎えそうで嫌に思う。

「陸が乃亜にやたらとちょっかい出すのも、大事にしてるのも、もしかしたら恋なんじゃないかって思ってたっ!でも乃亜が陸を相手にしてないって感じだったから、私もそんなの気にしないでいられたのっ!だから陸に告白だってした!乃亜のばか!あんたが好きならあんたの背中押したかったよ!言うの遅すぎ、もっと早く言ってよ親友でしょ!ばかばか、ばか!ばか野郎!」

 その瞬間、凛花の目から雫が落ちた。それを見てしまえばもう、私の涙腺も崩壊した。

 その場にふたり蹲り、わんわん泣いた。彼女は時折「ばか」と言った。私はその都度「ごめん」と言った。人目も時間も場所も気にせずに、ずっとずっと泣いていた。

 次第に泣き声が収まって、鼻を啜る音だけになった頃。ひしげた顔の凛花と目が合い、「酷い顔」と笑われた。掠れた声で、彼女は言う。

「これだけ文句言っておいてなんだけど、私も乃亜にはずっと親友でいてほしいから」