「す、すみません!」

 遊園地翌日のバイトはミスばかり。力のない指先をするっと抜けた皿は数枚、床で割れた。善人代表の店長に、溜め息を吹きかけられる。

「いいよ、ここは僕が片しておくから持ち場に戻って」
「すみませんっ、店長」
「今日は少し疲れているみたいだから、早めにあがりなさい」

 何もかも、うまくいかなかった。


 シフトを二時間も早く切り上げた私は、ただ開けたままの双眸で商店街を歩く。

「あれ、乃亜じゃん」

 そんな瞳に目的をくれたのは、卒業式以来初めて会う勇太君だった。
 

 喫茶店のテラス席に座った私達は、互いの近況報告をした。

「へえ、森と一緒のとこでバイトしてるんだ。森、元気?」
「元気元気っ。もしよかったら今度お店来てよ、飲み物奢るから。勇太君は最近どう?」
「俺は相変わらず勉強ばっか。それ以外は特に何もないよ」
「嘘だあ。勇太君モテるから、もう彼女とかできたでしょ?」
「ああ、有り難いことに告白はされたけど、勉強が理由で断っちゃった」
「あははっ。断り文句も勉強なんだねっ」

 口元に手をあてて、ふと気付く。彼と自然に恋の話ができている。