七月下旬、夏休み前最後の週末。並河高校の最寄り駅で、双葉と待ち合わせた。

「今日ね、私の友達が受付で鉢巻き配ってるんだって。双葉のこと紹介してもいい?」
「うんもちろんっ。中学のお友達?」
「そう。バイトも一緒なんだ。大きくて見た目は迫力あるけど、話しやすいよ」

 グレー一色の今日の空は、去年の体育祭を思い出させる。


 校庭へ着くと、男女問わない大勢の生徒が目に入る。

「なんか軽く運動会みたいだね。双葉、ナンパにご用心」
「ラジャ。体操服じゃない観客もちらほらいるね。並河高校の生徒とかかな?」
「そうじゃない?」

 そんな会話をしながら受付に向かえば、そこには二色の鉢巻きを手にした森君がいた。

「乃亜来たかー。桜橋校は赤い鉢巻きな」
「おはよう森君。今日は負けないよっ」
「こっちだって」
「そうそう、この子双葉ね。高校で一番の仲良し」

 ぺこりと頭を下げた双葉には、森君もお辞儀で返していた。

 上手く巻けぬ鉢巻きを森君に押し付けて、後頭部で結んでもらっていると、彼は私の背後で呟いた。

「今日、陸くるかも」

 その言葉に勢いよく振り返れば鉢巻きは振り出しに。「前を向いてて」と注意を受ける。

「この前、中学の奴等と遊んでた時に今日のことを話したらさ、何人かで応援しに行くって言われた。あ、乃亜がいることは言ってないよ」

 陸と会うとすればあのゲームセンター以来、約一ヶ月振りだ。
 時が解決してくれることを願っているが、まだまだそれには時間を要す。