【完結】鍵をかけた君との恋

 凛花と別れた後、万が一の可能性にかけてコンビニや公園へ寄ってみたけれど、陸の姿はなかった。そんなことをせずに電話でもすればいいのだろうけど、今日だけはしたくない。約束なんかじゃなくて、逢いたい気持ちが重なりたいんだ。

 もどかしさを抱えたまま帰宅もできず、川辺を歩く。ベンチに腰掛け、携帯電話を取り出して、今日撮影したたくさんの写真を見返した。その中には成人式まで会わなそうな友人も、ちらほらと写っていた。

「なのになんで陸とは撮れないのっ」

 写真を捲れば捲るほどに、フラストレーションは溜まっていく。悔しいけれど、素直になろう。
 私は陸のアイコンをタップした。

『今どこにいるの?』


 シャワーを浴び終えた夜八時。ようやく携帯電話が鳴る。

『今帰ってきた、何』

 今の今まで、陸は私のことなど気にしていなかった。そう思ってしまえば腹は立つ。

『あっそ。もういい』

 作成するは冷たいメール。何故なら私は知っているから。陸は私の機嫌が悪くなると。

『今、家?』

 すぐに、反応するって。


「俺、何かした?」

 マンションの下まで駆けつけた陸は、若干面倒くさそうだった。

「べつに。何もしてないんじゃん?」
「じゃあなんで怒ってんだよ」

 大きな溜め息を吐いて、柱にもたれかかる陸。そのままズズッとしゃがみ込む。

「悪かったよ返信遅れて。ダチ等とあのままファミレス行って飯食ってたら、すんげー時間経っちゃって。気付いた時にはもう、電池がなかった」

 べつにいいのだ。陸には陸の大切な時間があるのだから、返信が遅くなったことくらい。

「ごめんな、乃亜」

 私がつむじを曲げたのは、そこじゃない。

「制服……」
「制服?」
「陸、もう制服着てないじゃん」
「だって家帰ったし。って、乃亜もじゃん」

 陸の目の前で、私も膝を折り曲げた。

「制服で、写真撮りたかったの……」
「え」
「中学生最後の日に、同じ制服で、陸と並んで写真撮りたかったの」

 ぽつりぽつりと伝えると、陸がふふっと微笑んだ。

「そんな理由で、怒ってたの?」

 恥ずかしくて、足下に目を落とす。