合格発表後、初めての週末。父と奈緒さんが揃って家にいるタイミングで、試験の結果を伝えてみた。
「やったじゃない乃亜ちゃん!」
拍手と共に喜んでくれる奈緒さん。一方の父も競馬新聞は閉じなかったが、私の顔を見て「頑張ったな」と言った。
「制服の採寸とかしに、学校行くのよね?昼間ならお店の前に私──」
「大丈夫だよ。ひとりで行ける」
「……そっか。じゃあ必要なお金がわかったら、お父さんにちゃんと払ってもらってね」
彼女は父の背中を軽く叩く。「はいはい」という父はまた、新聞に目を落とす。そんな彼に微笑むと、彼女はどこかそわそわし始めた。
「乃亜ちゃん。今日のお昼、みんなで一緒に出かけない?」
「え」
「近くにフランス料理屋さんができたの。みんなでランチでもしましょうよ」
「い、いいの?高くない?」
「いーのいーの!お父さんが出すわよ。ね、お父さんっ」
彼女はまた、父の背中を叩く。彼はゆっくりと新聞を閉じた。
「そうだな、行くか。乃亜のお祝いだし」
そして、私のことを見た。
最近、感じ始めたことがある。奈緒さんがいるといないとでは、家の空気が少し違うことだ。父とだけでは弾まぬ会話も、彼女が間に入ればなんだかんだで繋がったりもする。少なくとも、話題に困るということはない。
「何着て行こうかなあ。スカートにしようかなあっ」
鏡の前、服を選ぶ奈緒さんの姿。彼女は父と私と過ごす時間を嬉しく思ってくれている。だから彼女がいるだけで、雰囲気が変わる、明るくなる。
「おばさんのワンピース姿は、誰も見たくないわよねえ?」
長いこと今日の一着を決められぬ奈緒さんは、初デート前の乙女のよう。私は見たままの感想を素直に伝えた。
「ワンピース似合うよ。可愛い」
その言葉に彼女は照れ笑い、手にしたワンピースと鏡に映る自分をチェックする。そして私の方を振り向き言った。
「じゃあ、これにしようかな」
初めて天国の母に報告がしたいと思った。私の家に、奈緒さんという人がいるよって。お母さんも、もしかしたら嫌いじゃないかもよって。
「やったじゃない乃亜ちゃん!」
拍手と共に喜んでくれる奈緒さん。一方の父も競馬新聞は閉じなかったが、私の顔を見て「頑張ったな」と言った。
「制服の採寸とかしに、学校行くのよね?昼間ならお店の前に私──」
「大丈夫だよ。ひとりで行ける」
「……そっか。じゃあ必要なお金がわかったら、お父さんにちゃんと払ってもらってね」
彼女は父の背中を軽く叩く。「はいはい」という父はまた、新聞に目を落とす。そんな彼に微笑むと、彼女はどこかそわそわし始めた。
「乃亜ちゃん。今日のお昼、みんなで一緒に出かけない?」
「え」
「近くにフランス料理屋さんができたの。みんなでランチでもしましょうよ」
「い、いいの?高くない?」
「いーのいーの!お父さんが出すわよ。ね、お父さんっ」
彼女はまた、父の背中を叩く。彼はゆっくりと新聞を閉じた。
「そうだな、行くか。乃亜のお祝いだし」
そして、私のことを見た。
最近、感じ始めたことがある。奈緒さんがいるといないとでは、家の空気が少し違うことだ。父とだけでは弾まぬ会話も、彼女が間に入ればなんだかんだで繋がったりもする。少なくとも、話題に困るということはない。
「何着て行こうかなあ。スカートにしようかなあっ」
鏡の前、服を選ぶ奈緒さんの姿。彼女は父と私と過ごす時間を嬉しく思ってくれている。だから彼女がいるだけで、雰囲気が変わる、明るくなる。
「おばさんのワンピース姿は、誰も見たくないわよねえ?」
長いこと今日の一着を決められぬ奈緒さんは、初デート前の乙女のよう。私は見たままの感想を素直に伝えた。
「ワンピース似合うよ。可愛い」
その言葉に彼女は照れ笑い、手にしたワンピースと鏡に映る自分をチェックする。そして私の方を振り向き言った。
「じゃあ、これにしようかな」
初めて天国の母に報告がしたいと思った。私の家に、奈緒さんという人がいるよって。お母さんも、もしかしたら嫌いじゃないかもよって。



