【完結】鍵をかけた君との恋

「陸。願いが叶った御守りって、どうすればいいの?」

 御礼参りを終えた私達は、鈴の前で話をする。

「さぁ。来年までとっておけば?」
「もう使わないのに?お焚き上げがなくても回収してくれないのかなあ?」

 携帯電話片手に私が調べだすと、陸はそれをひょいと奪った。

「えっ、何すんのっ。返してよ」

 私の手の届かないところまで高く掲げ、真剣な顔で白い息を吐く。

「来年でいいじゃん」
「え?」
「来年また、初詣の時にでも一緒に燃やせばいいよ」

 そう言って、陸は私の鞄に携帯電話を押し込んだ。くるりと方向転換し、境内の階段を降りて行く。私はそんな背中を追いかけた。

「それって、来年の初詣も一緒に行こーって意味?」

 陸は振り向かない。返答せずに、先を行く。

「ねえってばっ」

 彼の赤い耳が、もうそのまま答えなのだろうけれど、私は執拗に聞いてしまう。

「ねえ陸。今誘ったんでしょ?『来年の初詣も俺と一緒に行こう』って、そういう意味でしょ?」
「しつけえなあー」
「素直になりなよっ」
「うるせえ」

 自然に掴んだ陸の腕を離せない。日毎に増す、この空漠たる思い。

「誘ったって言えっ。陸のひねくれ者っ」
「しつけえってば」

 だけど陸が来年の約束をくれたから、寂しくなんかない。