「これだけ綺麗な花が咲いてるのに、俺には紫音しか見えない」


「ふぇ!?よ、夜桜先輩?」


「せっかく2人きりになれたんだ。カッコつけたセリフのひとつも言わせてくれよ」


「は、はぁ…」


こっちとしては恥ずかしいから困るんだけど。


「お前は花を見ながら、俺の話を軽く聞いてるだけでいいから」


「軽くなんて聞けないです!」


「なんでだ?」


「そんなこと言われたら恥ずかしくて、花を見るどころじゃ…なくなるからです」


意識したら更に顔が熱くなってきた。


「これだけ綺麗なものがあっても、お前は霞んだりしない。俺にとっては紫音が一番だから」 


「私も夜桜先輩が一番です」


「紫音」


ドサッ。

私はその場に押し倒された。


これだけ求められてるのに、拒絶する理由がどこにあるだろう。


神さま、今だけはどうか許してください。

女の子の姿である私が、夜桜先輩にどうしようもなく溺愛されていることを。


月だけが私たちを照らす中で、私は夜桜先輩に抱きしめられた。