それは1週間前に遡る。


「お兄ちゃんが倒れた!?」


学校帰り。
私はママからの電話で、兄が病院に運ばれたことを知った。


翼お兄ちゃんは氷山高校に通う二年生。
いつも笑顔を絶やさない人で、私は怒られたことがない。


喧嘩だってしたことがないくらい、近所では仲良し兄妹として有名だ。だけど、翼お兄ちゃんはあまり身体が強いほうじゃない。


出席日数も実はギリギリで次に倒れたら進級も危ないかも…なんて担任の先生から言われていた。


「翼お兄ちゃん!!」


「紫音」


「翼お兄ちゃん。大丈夫!?」


「倒れた場所が学園の寮だったからね。親友が助けてくれたんだ。やっぱり持つべきものは優しい友達だね」


「そっか…。無事で良かった」


私は安心したのか肩の力が抜け、その場に座り込んだ。


「だけど主治医の先生曰く、また入院しないといけなくなっちゃって進級は難しいかも。まあ、進級より命の方が大事だしね。親友と離れるのは寂しいけど」


「翼お兄ちゃん…」


翼お兄ちゃんは遠くを見つめていた。


私が翼お兄ちゃんと同じ立場だったなら…。

仲良しだった友達は上の学年に上がって、自分だけがもう一度同じ学年をやる。考えただけでも続けられるか不安になる。


なにか私にできることはないだろうか。

そう考えていると、ひとつの答えにたどりついた。