「蒼炎は相変わらず翼以外はダメなのかぁ」


「ん……」


ガブッ。


首筋に牙がプツリと入る。


想像してたよりもずっと痛い。

なんで私、誰かに見られながら血を吸われているの?


それに夜桜先輩の正体って…?


ふと私は小さい頃、翼お兄ちゃんが読んでくれた絵本が頭の片隅によぎった。


人間の血を吸って生きる、人ならざるものが世の中には存在していると。その名はヴァンパイア。


あぁ。

どうして、そんなことを今思い出すのだろう?


「翼?」


「蒼炎、まーた翼を気絶させたのか?」


「そうみたいだ。
俺は翼を看病するからお前は部屋に戻ってろ」


「はいはーい。お邪魔しましたよっと」


バタン。


「蒼炎、いつもより吸血時間が長かったなぁ。…よっぽど美味しかったんだろうな、極上の血は。
オレもいずれ彼女を味見させてもらおっと」