でも、昴の気持ちを聞いてからずっと返事を保留にしているのに、これで良いのか。
「花蓮、……いいよね?」
昴の熱意に押され、花蓮は迷いながらもこくんと頷いた。
「よかった」
昴は安堵の息を吐く。
「嬉しい。楽しみにしているよ」
その表情に、とりあえずの返事をしてしまったことを後悔した。
「さあ、急いで帰ろう。歩那もお腹空いただろう」
昴は花蓮の背中に手を添える。
タイミングよく歩那が泣いた。
「たゆ! まんまたゆのー」
「うんうん。ご飯食べような。お腹すいたな」
昴は歩那のお腹をぽんぽんと叩いた。
「昴さん凄い。歩那の言葉完璧に聞き取ってる」
「そりゃあ、そろそろ一緒に暮らして一ヶ月経つしね。始めはわからなかったけれど、毎日聞いていると何話しているかわかるもんなんだな。毎日語彙も増えてる気がして、話すのも楽しくて」
昴はすっかり父親のようだ。
彼と家族になる人は幸せだろうな。
歩那をチャイルドシートに乗せると、自分は助手席に回る。
「すみなせん、お夕飯、急いで作りますね。来週は少し早く起きて作り置きするようにしようかな」
新しい人が採用されるまで人手不足は解消しないので、暫くは遅い時間までの勤務が続きそうだ。
「夕飯は俺が作ったよ。デリバリーでも外食でもいいんだし、そんなに頑張らなくていいよ」
「えっ……」
きょとんと横を見る。
運転中の昴は流すような視線を寄こして、すぐに前を見た。
「昴さんが作ってくださったんですか?」
「うん。実は仕事を早く終えてね。急ぎの仕事がないなら早く帰って家事でも手伝ったらどうかと但馬に言われて。それもそうかと思って、今日は俺が作ることにした。今日は肉じゃがにしたよ。歩那の離乳食もばっちりだから、楽しみにしていて」
昴はさながらウインクでもしそうに得意げだ。
「ありがとうございます……凄く嬉しいです」
帰ったら昴の手作り料理が食べれるなんて、思ってもみなかった。
「嬉しすぎてびっくりしました」
(買い物もしてくれて、家事までこなしてくれて……)
いつまでも感動していると、昴は我慢できないといった感じで、ふふっと笑いを溢した。
「そんなに喜んで貰えるなんて俺も幸せだな。花蓮が笑ってくれると嬉しい。これからも、自分ひとりでなんとかしようとせずに俺を頼って欲しい。家事も育児も一緒にやっつけていこうな」
「あは、やっつけるんですか?」
「そう。仕事をやっつける、とかいう言い回しあるだろ? 頑張らなくてもいいんだよ。その日なんとかなればいいんだから」
支えてくれる人がいるというのは、なんと心強いのだろう。
暖かい言葉が胸に染みる。
目頭がじわりと潤って、ぐっと堪えた。
昴といると、どんどん涙もろくなっていく。
歩那とふたりの生活は、楽しいことばかりではなかった。
でも家事も育児も働くことも、こんなにも大変なのだと知ることが出来て、ぬるま湯に浸かっていた以前より、今の精一杯生きてる自分がずっと好きだ。
なにより、歩那との時間は何ものにも代えがたい宝物だ。
帰宅するとすぐにご飯となった。
「花蓮、……いいよね?」
昴の熱意に押され、花蓮は迷いながらもこくんと頷いた。
「よかった」
昴は安堵の息を吐く。
「嬉しい。楽しみにしているよ」
その表情に、とりあえずの返事をしてしまったことを後悔した。
「さあ、急いで帰ろう。歩那もお腹空いただろう」
昴は花蓮の背中に手を添える。
タイミングよく歩那が泣いた。
「たゆ! まんまたゆのー」
「うんうん。ご飯食べような。お腹すいたな」
昴は歩那のお腹をぽんぽんと叩いた。
「昴さん凄い。歩那の言葉完璧に聞き取ってる」
「そりゃあ、そろそろ一緒に暮らして一ヶ月経つしね。始めはわからなかったけれど、毎日聞いていると何話しているかわかるもんなんだな。毎日語彙も増えてる気がして、話すのも楽しくて」
昴はすっかり父親のようだ。
彼と家族になる人は幸せだろうな。
歩那をチャイルドシートに乗せると、自分は助手席に回る。
「すみなせん、お夕飯、急いで作りますね。来週は少し早く起きて作り置きするようにしようかな」
新しい人が採用されるまで人手不足は解消しないので、暫くは遅い時間までの勤務が続きそうだ。
「夕飯は俺が作ったよ。デリバリーでも外食でもいいんだし、そんなに頑張らなくていいよ」
「えっ……」
きょとんと横を見る。
運転中の昴は流すような視線を寄こして、すぐに前を見た。
「昴さんが作ってくださったんですか?」
「うん。実は仕事を早く終えてね。急ぎの仕事がないなら早く帰って家事でも手伝ったらどうかと但馬に言われて。それもそうかと思って、今日は俺が作ることにした。今日は肉じゃがにしたよ。歩那の離乳食もばっちりだから、楽しみにしていて」
昴はさながらウインクでもしそうに得意げだ。
「ありがとうございます……凄く嬉しいです」
帰ったら昴の手作り料理が食べれるなんて、思ってもみなかった。
「嬉しすぎてびっくりしました」
(買い物もしてくれて、家事までこなしてくれて……)
いつまでも感動していると、昴は我慢できないといった感じで、ふふっと笑いを溢した。
「そんなに喜んで貰えるなんて俺も幸せだな。花蓮が笑ってくれると嬉しい。これからも、自分ひとりでなんとかしようとせずに俺を頼って欲しい。家事も育児も一緒にやっつけていこうな」
「あは、やっつけるんですか?」
「そう。仕事をやっつける、とかいう言い回しあるだろ? 頑張らなくてもいいんだよ。その日なんとかなればいいんだから」
支えてくれる人がいるというのは、なんと心強いのだろう。
暖かい言葉が胸に染みる。
目頭がじわりと潤って、ぐっと堪えた。
昴といると、どんどん涙もろくなっていく。
歩那とふたりの生活は、楽しいことばかりではなかった。
でも家事も育児も働くことも、こんなにも大変なのだと知ることが出来て、ぬるま湯に浸かっていた以前より、今の精一杯生きてる自分がずっと好きだ。
なにより、歩那との時間は何ものにも代えがたい宝物だ。
帰宅するとすぐにご飯となった。



