ワケありベビーと純真ママを一途な御曹司は溢れる深愛で離さない~君のすべてを愛してる~

以前の知り合いとは誰とも連絡をとっていないとはいえ、調べられたらすぐにバレてしまいそうだ。
想像するだけで恐ろしい。

シンデレラなんて、本当にとんでもない。
逃げてばかりの弱い人間だ。

閉園時間ぎりぎりに保育園に駆け込むと、思った通り歩那は帰宅が一番最後で先生に抱っこされていた。

「まんまぁ!」

こちらに腕を伸ばして泣いている。

「歩那。ごめんね~おまたせ~」

抱っこをかわりぎゅっと抱きしめると、歩那は昴にも手を伸ばした。
スーツの上着をきゅっと掴む。

「すったん!」

「あら」

先生がうれしそうな声をだした。

「お?」

昴もぴくりと反応する。

「今、昴って呼んだよね?」

「そうかも……わたしがいつも昴さんって呼んでるから、同じように呼んでるのかも」

すばるさん、と発音できなくて、“すったん”だ。

「歩那~。うわあ、すごいな。そうだよ。昴だよ」

喜んだ昴は、歩那に頬ずりをする。

「しゅった!」

また発音が違う。かわいらしくて笑った。

「仲良しですね。歩那ちゃんお迎えうれしいね~。参観会、みんなで楽しめたらいいね」

先生が歩那に話しながら持ち帰りの荷物を渡してくれた。
花蓮はきょとんとする。

「参観会?」

「ええ、先月からお知らせしていた、月末に開催の保護者参観会です。詳しいお知らせをお配りしてますので、目を通しておいてください。参加人数を把握したいので、出欠は今週末までです。よろしくお願いしますね」

車に戻りながら歩那のカバンの中を見ると、手紙が入っていた。
手紙を開くと、昴も覗く。

手紙には、子供とダンスやゲームをして楽しもうと書いてあった。
参加は各家庭二名まで。おやつも一緒に食べるらしい。

日程は土曜日。そういえば先月お知らせがあったときに、土曜日のシフトを休みにしておいたんだった。すっかり予定を忘れていた。

「……これって、親子じゃなくても参加できるってことだよね」

昴の口調には期待が込められていた。
“保護者参加会”なんと多様性のある言葉だろう。

家庭の状況に合わせて、誰でも参加できるようになっている。

歩那が褒められてうれしかったのか「すったん! すったん!」と連呼していた。
昴はその様子を嚙みしめるように見てから、真剣な面持ちになる。

「俺も参加したい」

いいのかな? よくわからなかった。
どうすべきか。自分はどうしたいのか。歩那の為には何が正解なのか。
これまでの行事で、夫婦で参加している家族を羨ましいと思ったことは何度もあった。
だから正直、一緒に参加できるのは嬉しい。